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第五条

親鸞は、父母(ぶも)の孝養(きょうよう)のためとて、一返(いっぺん)にても念仏まふしたることいまださふらはず。

そのゆへは、一切の有情(うじょう)は、みなもつて世々生々(せせしょうじょう)の父母(ぶも)・兄弟なり、いづれもいづれも、この順次生(じゅんじしょう)に、仏になりて、たすけさふらうべきなり。

わがちからにてはげむ善にてもさふらはばこそ、念仏を廻向して、父母(ぶも)をもたすけさふらはめ。ただ、自力をすてて、いそぎ(浄土の)さとりをひらきなば、六道(りくどう)・四生(ししょう)のあひだ、いづれの業苦(ごうく)にしづめりとも、神通方弁をもつて、まづ有縁を度すべきなりと云々。

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語釈

父母(ぶも)
父と母。ここでは過去世からの父母も含む。
孝養(きょうよう)
親孝行として供養すること。亡き親の追善供養も含む。
一返(いっぺん)
一度、一回。
いまださふらはず(いまださぶらわず)
いまだございません。まだ~したことがない。
一切(いっさい)
すべて、あらゆるもの。
有情(うじょう)
心を持つ生きもの。衆生とほぼ同義。サンスクリット語のサットヴァの訳語。
世々生々(せせしょうじょう)
過去から未来にわたる無数の生まれ変わり。輪廻の中での数え切れない生。
兄弟(きょうだい)
兄弟姉妹。ここでは輪廻の中で縁ある存在すべてを指す。
順次生(じゅんじしょう)
次の生。この命が終わった後の次の生まれ変わり。浄土に往生することを指す。
わがちから(わがちから)
自分の力、自力。
はげむ(はげむ)
励む、努力する。
廻向(えこう)
自分の功徳を他者に振り向けること。ここでは自力の廻向ではなく、仏の廻向の意味も含む。
自力(じりき)
自分の力で修行し悟りを得ようとすること。他力に対する語。
さとり(さとり)
悟り、仏の境地。浄土で開く無上の悟り。
六道(りくどう)
迷いの世界の六つの境界。地獄・餓鬼・畜生・修羅・人間・天の六つ。
四生(ししょう)
生まれ方の四種類。胎生・卵生・湿生・化生。あらゆる生き物の生まれ方を示す。
業苦(ごうく)
業(過去の行い)による苦しみ。
しづめり(しずめり)
沈んでいる、苦しみの中にいる。
神通方弁(じんずうほうべん)
神通力と巧みな方便。仏が持つ不思議な力と衆生を導く手段。
有縁(うえん)
縁のある者。仏法と縁のある人々。
度す(どす)
救う、済度する。迷いの世界から救い出すこと。